【賃上げ】賃金構造基本統計調査の概況から見た、日本の労働市場の変化と私見

2024年の春闘では例年以上の高い水準の賃上げを求める動きが相次ぎ、企業からも満額回答が続々と出ていましたね。

今回は、厚生労働省より公表された2023年の賃金構造基本統計調査の結果から分かったことと、それに関するトピックについて考察してみます。

本記事は以下の資料を参考にしています。
参考:厚生労働省「PDF:令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2024/03/27)

目次

全体の賃金上昇と若手重視の傾向

まずは、一般労働者の平均賃金が31万8300円で前年から2.1%増え、過去最高に達したことが挙げられます。
しかしながら、年齢階級別の賃金変化率を見てみると大企業で35〜54歳の従業員の賃金はマイナスとなっています。

参考:厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況 第4表

産労総合研究所の調査では2023年4月の新入社員の給与を引き上げた企業割合が68.1%と、前年度から27.1ポイントも上がっています。
企業には新卒の初任給を増やして、若手の人材確保に注力したい思惑がありそうですね。

非正規雇用の増加と大企業の賃金減少

非正規雇用の増加が大企業の平均賃金を下げる要因となりました。
特に製造業や情報通信、小売りなどの人手不足の業種で、非正規雇用による人材の穴埋めが広がったことが影響したと思われます。マイナスとなるのは3年ぶりとのことです。

また、男性の賃金を100としたときに女性は71と前年調査から1ポイント近く下がり、男女間の賃金格差が拡大しています。要因としては女性の非正規雇用の増加が考えられます

中堅社員の賃金減少とジョブ型の導入

もともと手厚かった中堅社員の給与は若手引き上げのあおりを受けて減った可能性があります。

近年はジョブ型など年功序列に代わる賃金制度の導入が進んでいますし、年齢に応じて単純に給与が上がるのではなく、労働市場の中での市場価値や評価が給与に反映されるようになるかもしれませんね。

中小企業の賃金増加と大企業との格差縮小

中小企業は全世代で賃金が伸びており、大企業の賃金を100とした時の中企業、小企業の賃金指数はそれぞれ90.0、85.0となっています。前年からそれぞれ3.0ポイント、3.3ポイント上昇していることから、大企業との格差は縮小しているといえます。

しかし中小企業は人手不足感が強く、大企業ほど価格転嫁が進まないことから、賃上げの原資に乏しいとの分析もありますね。

まとめ

本記事では厚生労働省より公表された2023年の賃金構造基本統計調査の結果から分かったことについてまとめてみました。

今回の賃上げが今年だけに留まることなく、来年以降も物価上昇を上回る賃上げを持続できるかどうかが重要なポイントと考えます。

まさに今、長かったデフレ時代から脱却し賃金と物価の好循環が定着していくことができるかという正念場を迎えています。実質賃金をプラスに転じさせるためにも、政府にはその後押しとなるような政策を推進していってほしい限りです。

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