日本人の最新の貯蓄事情はどうなっているのでしょうか?
今回は、金融経済教育推進機構から発表された最新の調査データをもとに、日本人の金融資産の保有状況を分析し、その変化や傾向を詳しくみていきます。
今回のデータは、以前「金融広報中央委員会」が行っていた「家計の金融行動に関する世論調査」の流れをくむものですが、同委員会は2024年4月に「J-FLEC 金融経済教育推進機構」に移行しています。
- <調査・統計データ集 >家計の金融行動に関する世論調査(2024年)
- <PDF版>「家計の金融行動に関する世論調査2024年」 (単身世帯調査)
- <PDF版>「家計の金融行動に関する世論調査2024年」 (二人以上世帯調査)
世帯別の金融資産保有額
単身世帯の金融資産保有額
金融資産ゼロ世帯を含む
平均値 [ 万円 ] | 中央値 [ 万円 ] | |||
---|---|---|---|---|
2024年 | 昨年比 | 2024年 | 昨年比 | |
20代 | 161 | +40 | 15 | +6 |
30代 | 459 | -135 | 90 | -10 |
40代 | 883 | +324 | 85 | +38 |
50代 | 1087 | -304 | 30 | -50 |
60代 | 1679 | +211 | 350 | +140 |
70代 | 1634 | +105 | 475 | -25 |
全体 | 989 | +48 | 100 | ±0 |
金融資産保有世帯
平均値 [ 万円 ] | 中央値 [ 万円 ] | |||
---|---|---|---|---|
2024年 | 昨年比 | 2024年 | 昨年比 | |
20代 | 260 | +41 | 100 | -3 |
30代 | 700 | -212 | 305 | +5 |
40代 | 1342 | +378 | 355 | -145 |
50代 | 1859 | -429 | 600 | +45 |
60代 | 2363 | +123 | 960 | -140 |
70代 | 2257 | +153 | 1000 | -100 |
全体 | 1497 | +5 | 500 | ±0 |
金融資産ゼロ世帯を含んだ中央値は20~50代は100万円以下となっています。
また、全体での中央値は変わっていないですが平均値は上がっており、貯蓄格差が広がっている可能性があります。
二人以上世帯の金融資産保有額
金融資産ゼロ世帯を含む
平均値 [ 万円 ] | 中央値 [ 万円 ] | |||
---|---|---|---|---|
2024年 | 昨年比 | 2024年 | 昨年比 | |
20代 | 382 | +133 | 84 | +54 |
30代 | 677 | +76 | 180 | +30 |
40代 | 944 | +55 | 250 | +30 |
50代 | 1168 | +21 | 250 | -50 |
60代 | 2033 | +7 | 650 | -50 |
70代 | 1923 | +166 | 800 | +100 |
全体 | 1374 | +67 | 350 | +20 |
金融資産保有世帯
平均値 [ 万円 ] | 中央値 [ 万円 ] | |||
---|---|---|---|---|
2024年 | 昨年比 | 2024年 | 昨年比 | |
20代 | 508 | +105 | 185 | +14 |
30代 | 909 | +53 | 360 | +23 |
40代 | 1293 | +57 | 520 | +20 |
50代 | 1677 | +66 | 700 | -45 |
60代 | 2581 | -7 | 1140 | -60 |
70代 | 2450 | +262 | 1205 | +105 |
全体 | 1833 | +75 | 780 | +65 |
こちらは中央値、平均値ともに上昇しています。特に20~30代に絞ると、単身世帯よりも二人以上世帯の貯蓄傾向が顕著に表れています。
貯蓄格差の拡大
金融資産が増加した要因については以下のような結果です。

収入増加よりも「株式・債券の評価額の上昇」「配当・金利収入」の影響が大きいようです。
つまり、投資をしている人と、していない人で格差が広がっているということが分かります。
金融資産ゼロ世帯は減少傾向
以下に世帯別の金融資産保有額の分布を示します。
単身世帯

二人以上世帯

この結果から単身世帯・二人以上世帯ともに金融資産ゼロの割合は減少した分、100万~200万円の層へ移動している可能性が読み取れます。また、二人以上世帯では1,000万~3,000万円の層も増加しています。
この要因の一つは「新NISA」なのでしょうか?ここ数年の株高や円安の恩恵を受けているのかもしれませんね。
金融リテラシーの変化
金融商品を選ぶ際、「収益性」を重視する人が増えている

項目の詳細
- 収益性:「利回りが良いから」および「将来の値上がりが期待できるから」
- 安全性:「元本が保証されているから」および「取扱金融機関が信用できて安心だから」
- 流動性:「現金に換えやすいから」および「少額でも預け入れや引き出しが自由にできるから」
- その他:「商品内容が理解しやすいから」および「その他」
これも新NISAの影響なのでしょうか?リターンを重視する人は年々増加していく傾向がありますね。
情報収集の手段も変化し、銀行窓口やセミナーよりも「ウェブサイト」が主流に
金融関連の情報収集は書籍やテレビなどのマスメディアが主流だった時代から、「ウェブサイト」が5割程度まで占めるようになり、情報収集の手段が変化してきているようです。

リスクをとって投資をする意欲も増加
「元本割れする可能性があるが、収益性の高いと見込まれる商品の保有をしたいか?」という質問に対する答えは以下のような結果になっています。

言い換えれば、「リスクをとって投資をしたいか?」という設問なのですが、これも年々増加傾向にあるようです。
以前は投資において「安全性」を最優先する人が多かったですが、最近は「より高いリターンを求める」傾向が強まっています。これは金融教育の進展や、インターネットを通じた投資の情報発信の影響と考えられます。
まとめ
最新の調査データから以下のようなことが見えてきました。
- 貯金ゼロ世帯は減少傾向にあるが、貯金が多い人と少ない人の差は拡大している
- 投資をしている人は資産を増やせているが、していない人はあまり変わっていない
- 最近の金融行動や金融リテラシーの変化がデータから見えてきた
私たちにできることは、「なるべく早く資産形成を始めること」。
少額からでも投資を始め、金融リテラシーを高めることで、貯蓄格差の拡大に取り残されないようにしましょう。
今回の結果を、これからの資産形成に役立てていただければ幸いです。
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