経済的な自立と早期退職を目指す「FIRE」が話題となっている昨今、注目を集めているのが「コーストFIRE」です。完全なリタイアを目指すFIREとは異なり、老後資金を効率的に形成できる現実的な選択肢として関心を集めています。
本記事では、コーストFIREの概要とメリット・デメリット、実現に必要な投資額のシミュレーション結果と実現に至るまでのシナリオプラン案も交えて解説していきます。
FIREの種類とコーストFIREの概要
FIREの種類
FIREは主に以下の5種類に分類されます。
- ファットFIRE
- 資産所得で生活費と贅沢費をまかなう
- 必要資産は最も多い
- リーンFIRE
- 質素な生活を前提に資産所得で最低限の生活費をまかなう
- バリスタFIRE
- 資産所得とアルバイト収入を併用
- 仕事量を減らして働き続ける
- サイドFIRE
- 副業と資産所得で生活費を確保する
- コーストFIRE
- 老後資金を確保した後に、給与は自由に使う
コーストFIREとは?
コーストFIREとは、一定額を投資し、その後は資産の成長を待つだけで老後資金を用意することで新たな貯蓄が不要になる状態を指します。
老後資金を形成した後は、給与収入はすべて生活や趣味に使えるため、働き方・生き方の選択肢が広がります。年利3~5%の運用を続けることで、資産は時間とともに成長し老後の経済的不安が解消されます。
コーストFIREのメリットとデメリット
メリット
- 経済的安心感
- 老後資金の運用が順調であれば、老後の資金不足の不安を軽減できる
- 貯蓄ストレスの軽減
- 追加の資産形成が不要になるため、給与を自由に活用できる
- メンタル面の安定
- 昇進や給与アップに執着せずに働けるため、精神的負担が軽減される
- 家族との時間の充実
- 趣味や家族との思い出作りに投資できる
- リスク許容度の向上
- 安定した給与収入を背景に、より積極的な資産運用も可能
デメリット
- 完全な経済的自立は未達成
- 労働が継続するため、FIREの理想である「自由な時間の獲得」は限定的
- 働き続けるリスク
- 職場環境の変化に柔軟に対応する必要がある
コーストFIREの実現に向けて
老後資金はどれくらい用意すればいい?
シミュレーションに必要な条件として老後資金の金額があります…が、千差万別ですし分かりません。
だからこそ多くの人が不安になるのでしょう。
そこで今回は、老後生活の生活費のうち公的年金では不足する金額を自分で用意するものとし、それを3000万円と仮置きしてみます。
家族構成や生活費なども加味した詳細なシミュレーションは機会があれば今後挑戦しようと思います。
年齢別のコーストFIREに必要な投資額
今回は、以下の条件でシミュレーションをやってみます。
- 現在の年齢
- 30歳
- 退職年齢
- 65歳
- 家族構成
- 一人暮らし
- 老後資金
- 3,000万円(退職金含む)
- 退職金
- 1,000万円
- 運用利回り
- 3%
つまり、65歳までに運用資産を2000万円を目指します。
また、何歳までにコーストFIREの状態になりたいかもパラメータになるので今回は年齢別(35~60歳)で考えてみます。
シミュレーション結果が以下になります。
コーストFIREを達成する目標年齢 | コーストFIRE達成時に必要な資産額 [万円] | 毎月の投資額 [万円] |
---|---|---|
35歳 | 824 | 12.7 |
40歳 | 955 | 6.9 |
45歳 | 1107 | 4.9 |
50歳 | 1284 | 4.0 |
55歳 | 1488 | 3.4 |
60歳 | 1725 | 3.0 |
運用利回りを5%にすると?
前掲のシミュレーション結果は運用利回りを3%としていたため、かなり保守的に見積もっています。毎月の投資額をもう少し抑えるためにも、よりリスクを取った運用をした場合の利回り5%でもシミュレーションをしてみました。
そのシミュレーション結果が以下になります。
コーストFIREを達成する目標年齢 | コーストFIRE達成時に必要な資産額 [万円] | 毎月の投資額 [万円] |
---|---|---|
35歳 | 463 | 6.8 |
40歳 | 591 | 3.9 |
45歳 | 754 | 2.9 |
50歳 | 962 | 2.4 |
55歳 | 1228 | 2.1 |
60歳 | 1567 | 2.0 |
ここまでくると、かなり実現可能性が高まってくるのではないでしょうか?
続いて、シミュレーション結果をもとに、コーストFIREを実現するまでのステップシナリオ2案を描いてみます。
コーストFIRE実現までのシナリオパターン #1 ~短期集中で目指すプラン~
早めのコーストFIRE実現に向けて、資産形成に力を注ぐ期間を決める。
毎月7~13万円(運用利回りで変化)を投資に回す。
老後資金の種銭は確保できているので、今まで貯蓄していた分は趣味や好きなことに使えるようになる。
仕事内容を好きなこと重視にしたり、働き方をダウンシフトすることも選択できる。
定年まで勤めた平均的なサラリーマンの厚生年金(国民年金分含む)平均受給月額は、約14.4万円。
運用については値動きを小さくするなどの安定運用に切り替えて利回りは3%にしても、毎月11万円取り崩しできる。
これらを合わせると毎月約25.4万円が使える。しかも、100歳まで資産が枯渇しない。
注意点としては、コーストFIRE生活中の可処分所得ほどは手元にお金が残らないため、生活レベルのギャップで生活が破綻しないように家計管理が重要。
コーストFIRE実現までのシナリオパターン #2 ~今も大切に、ゆるりと目指すプラン~
時間を味方につけて毎月の投資額を低く抑える。
毎月2.5~4万円(運用利回りで変化)を投資に回す。
貯蓄に回してもお金が余るなら娯楽にも使っていけるため、今と未来をバランスよく充実させることを目指せる。
定年後に比べれば、まだまだアクティブに動ける時期であるため、定年後にやろうとしていたことを前倒して挑戦・実現できる。
仕事内容を好きなこと重視にしたり、働き方をダウンシフトすることも選択できる。
定年まで勤めた平均的なサラリーマンの厚生年金(国民年金分含む)平均受給月額は、約14.4万円。
運用については値動きを小さくするなどの安定運用に切り替えて利回りは3%にしても、毎月11万円取り崩しできる。
これらを合わせると毎月約25.4万円が使える。しかも、100歳まで資産が枯渇しない。
注意点としては、コーストFIRE生活中の可処分所得ほどは手元にお金が残らないため、生活レベルのギャップで生活が破綻しないように家計管理が重要。
まとめ
コーストFIREは、完全なFIREに比べて高額な資産形成を必要としないため、より現実的で無理のない選択肢として注目されています。
老後資金の種銭を確保した後は給与を生活費や趣味に使えるため、将来の経済的不安を軽減しながらも現役生活の質を向上させる可能性を秘めています。
無理のない資産形成を通じて、働き方と生活の充実をサポートするコーストFIRE。
これから資産形成や人生設計を考えている方は、まずは自分に合った資産運用プランを見つけ、経済的自立への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?
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