2024年から新NISAが始まり、SNSでは「生涯投資枠1,800万円を使い切るべきだ!」「毎年360万円突っ込んで5年で最速で埋めろ!」といった情報も散見されます。そのため「埋められない私はダメだ…」と感じてしまう人が少なくありません。
しかし、実際にはこの金額を投資に回すことは現実的でない方が大半です。
また、何が何でも投資枠を埋めるべきと感じているならそれは大きな勘違いです。
本記事では家計調査の統計データをもとにして、無理なく資産形成を進める方法と新NISAの本質について考えます。
新NISAの投資枠1,800万円、埋められる人は?%
家計調査の統計データから分かる平均貯蓄額
総務省統計局が公開しているデータとグラフを以下に示します。

これによると、2人以上の世帯の平均貯蓄額は約1,904万円ですが、中央値は約1,000万円と平均を大きく下回ります。また、このデータでは載っていませんが貯蓄ゼロ世帯も多く、全体の約20%が該当します。
しかし、このデータには高齢者などのリタイアしている世帯も含まれますので、勤労者世帯に絞った以下のデータとグラフも確認してみます。

勤労者世帯のみに絞ると平均貯蓄額は約1,500万円、中央値は約836万円となり、高齢者世帯を含めた場合と比べて低い結果です。これは高齢者の方がそれだけ平均を押し上げていたと考えられます。
新NISA1,800万円を埋められる人はどれくらい?
2人世帯の場合は生涯投資枠3600万円となりますので、前掲のグラフを見ると該当するのは13.4%未満の世帯です。
しかし、貯蓄額の全額を投資することは考えにくいため、実際には10%未満といえます。
新NISA枠の1,800万円をすべて埋められる人は全体の約10%未満に過ぎず、大半の人は年間360万円を使い切ることすら難しいのが現実です。
新NISA枠、全部埋める必要はない
結論、NISA枠をすべて埋める必要はありません。
なぜなら、資産形成の目的は将来の老後にお金の不安が残らないようにすることだからです。
しかも、年間360万円も投資しなくても、適切な資産運用で老後資金を確保することは可能です。
以降の章で詳しく解説していきます。
資産形成で必要な投資額の考え方
資産形成に必要な投資額は個人で大きく異なるのは当然です。具体的には、投資額、運用期間、目標金額の3つの変数を組み合わせ、自分に適したプランを設計することが大切です。
以下は毎月の投資額と運用期間における最終的な評価額シミュレーションの結果を示したものです。
最終評価額が3000万円~5000万円、5000万円~1億円、1億円以上でそれぞれ色分けしています。

この表に、元本の列を追加してみます。
元本が1800万円以上、つまりNISA枠が埋まるシナリオには色付けしています。

毎月の投資額を5万円、運用期間25年の場合で約3000万円のポテンシャルがあることが分かります。
これでも元本は1500万円と枠を埋めきってないという結果です。
運用期間を長くとるほど、評価額に占める元本の割合が小さいことが分かります。
つまり、運用期間が長くとれる若年層は少額投資でも十分な成果が見込めるということです。
とはいえ、50歳以上の方が ”65歳までに2500万円を用意したい” となると毎月の投資額が10~20万円必要となりますし、NISAの生涯投資枠を埋めないと目標金額には届かない点は注意です。
逆にいえば、「NISA枠を最速で埋めなきゃ!」と考えるのは運用期間が比較的長くとれない方の投資戦略であり、若い投資系インフルエンサーの煽りを受けて20~40代が焦って入金額を増やす必要はないというわけです。(早期退職やFIREを目指しているなら別ですが…)
大事なのはファイナンシャルプラン
老後の備えも重要ですが、現在の生活を犠牲にしないことが大切です。そのためにも、現在と将来のバランスを取りつつ日々の生活を楽しみながら資産運用を進めることが理想的なアプローチといえますね。
まとめ
新NISAは将来に備えるために重要な制度ですが、生涯投資枠を埋めることは必須ではありません。むしろ、自分の家計や人生設計に合わせた柔軟なプランニングが重要です。
投資を始めるにあたっては、「将来に必要な金額」と「無理のない計画」を立て、着実に資産を形成していきましょう。
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