近年、所得税の「103万円の壁」についての議論が進んでおり、基礎控除額がついに上がるのではないかと期待の声も出てきています。
しかし、103万円の壁を撤廃しても、「106万円の壁」をはじめとする他の「壁」が存在し、多くの人が働き方に悩んでいます。この「壁」の問題は何が原因で、今後どのように解決されるべきなのでしょうか?
本記事では、手取りが減る「壁」について、最新の動向を踏まえて解説していきます。
どのような「壁」が存在するのか?
代表的な「壁」は6つあります。図で見た方が分かると思いますので以下の図をご覧ください。

これは、世帯収入の手取りとパート勤務者の年収の関係となっており、それぞれの壁を超えた際にかかる税金や減額される控除を示しています。
特に106万円、130万円の壁によって手取りが減ることが分かると思います。これは社会保険への加入が関係しています。この後は「106万円の壁」と社会保険への加入について詳しく見ていきます。
106万円の壁とは
「106万円の壁」とは、年収106万円を超えると社会保険に強制加入する条件のことです。これにより、手取りが一時的に大きく減少します。この壁は、以下の全ての条件を満たす場合に適用されます
- 週20時間以上の勤務
- 月額8.8万円以上(=年収106万円以上)
- 従業員51人以上の企業に勤務
- 学生でない
最近の最低賃金の引き上げに伴って、週に20時間以上働けば年収106万円以上となる地域が増え、あえて要件とする必要性が薄れているとの議論もあります。
社会保険加入の対象者は今後も拡大していく?
以下の図は社会保険加入の適用基準拡大を行った場合にどれだけ対象者が拡大するかを示しています。

現状は青い四角で囲まれた範囲が対象となっていますが、企業規模要件の撤廃や最低賃金の引き上げによる影響により90~270万人が新たに社会保険に強制加入となることが分かります。
また、週の勤務時間条件が10時間というシナリオ(上図のDに該当)も含めて試算をしていることから、更なる適用基準の拡大が確実視されています。
このことから、厚生労働省は言うなれば「労働者皆保険」を推進しているように読み取れます。
これにより、より多くのパート労働者や低所得者層が社会保険に加入せざるを得なくなる見込みで、増加する負担が労働意欲を削ぐ懸念も指摘されていますね。
まとめ
今回は、ホットな話題である「103万円の壁」に関連して、手取りを減らす「壁」について解説しました。
特に「106万円の壁」に関する社会保険への加入条件と今後の動向について整理しました。
現在の社会保険料は企業と労働者がそれぞれ負担するため手取りを圧迫し、働き損のような感覚を生み出している状態で、「壁」の問題の根本は、税制よりも社会保険制度にあると指摘されています。
そのため、国が打ち出す政策は税制や控除を調整するだけでなく、この根本的な課題を解決しなければ効果が限定的で、社会保険の仕組みそのものの見直しが必要だと思います。
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